ライス大学の研究チームは、グラフェンと窒化ホウ素のハイブリッド体で形成した特殊な三次元構造が、水素貯蔵に適しているとのシミュレーション結果を報告した。二次元のグラフェンを窒化ホウ素ナノチューブの柱で支えて作った空間の内部に水素を吸蔵する。燃料電池自動車向けの水素貯蔵材料として使える可能性がある。2016年10月23日付けの Langmuir に論文が掲載されている。

グラフェン/窒化ホウ素ハイブリッド構造の内部空間に多量の水素を貯蔵できる(出所:ライス大学)

 同チームは、以前の研究において、グラフェンと窒化ホウ素ナノチューブを切れ間なくつなぎ、三次元のハイブリッド構造体を作れることをコンピュータ・モデリングによって明らかにしていた。今回の研究では、三次元構造内部の空間を利用して水素原子の吸蔵を行った場合の挙動について、分子動態シミュレーションで調べた。

 最新のシミュレーションでは、支柱構造で支えることにより、グラフェンだけを使った場合でも、グラフェンと窒化ホウ素のハイブリッド体を使った場合でも、どちらも十分な表面積を確保できることが示されている(およそ2547m2/g)。また、これらの材料に酸素あるいはリチウムを添加することによって、水素の結合性がさらに向上することも分かっている。

 研究チームは今回、(1)支柱構造で支えた窒化ホウ素、(2)支柱構造で支えたグラフェン窒化ホウ素ハイブリッド体、(3)同ハイブリッド体に酸素をドーピングしたもの、(4)同じくリチウムをドーピングしたものという4つのパターンに焦点を当てて詳細なシミュレーションを行った。その結果、室温条件・室内気圧条件で水素吸蔵量が最も高くなるのは、酸素をドーピングしたグラフェン窒化ホウ素ハイブリッド体であることが確認された。この場合、吸蔵可能な水素の量は自重の11.6%であり、体積1Lあたりでは60g程度の重さになるという。この値は、多孔性窒化ホウ素、金属酸化物フレームワーク、カーボンナノチューブ(CNT)などを遥かに凌ぐ値である。なお、-196℃の低温条件では、同材料で自重の14.77%の水素を吸蔵できるという。

 燃料電池車用の水素貯蔵材料として使用するには、吸蔵可能な水素の量が多いだけでなく、必要に応じた水素の出し入れができなければならない。研究チームによると、ドーピングしていないグラフェン窒化ホウ素ハイブリッド体の水素吸蔵は弱いファンデルワールス力によっているが、酸素原子をドーピングした場合は、材料表面が水素とより結合しやすくなり、圧力のかかった状態で水素が入り込みやすい表面状態となる。圧力を抜けば水素はハイブリッド体の外部に出ていくと考えられる。
 
発表資料