スタンフォード大学の研究チームが、光電変換層、電極部などすべての要素を炭素材料だけで構成したオールカーボン太陽電池を作製したとのこと。変換効率はまだ低いが、地球上に豊富に存在する安価な資源である炭素だけで作られた太陽電池として注目される。超高温など苛酷な環境下で使える可能性もある。2012年10月31日付の ACS Nano オンライン版に論文が掲載されている。

試作されたオールカーボン太陽電池 (Credit: Stanford University)


つづき
 光電変換層に炭素材料を使った太陽電池は、これまでにもいくつか報告されてきた。最近では、2012年6月にMITが単層カーボンナノチューブ(SWCNT)とフラーレン(C60)でpn接合を形成したカーボン太陽電池を作製。このときの変換効率は0.1%だった。電極部はITOと銀電極を使用していた(既報)。
 今回スタンフォード大のチームが報告した太陽電池は、光電変換層に加えて電極部にも炭素材料を使用したオールカーボン製であることが特徴。光吸収層およびドナー層には、有機半導体高分子(P3DDT)によって整列させた半導体型SWCNTを使用。アクセプタ層にはC60を使用し、SWCNT/C60の二層による光電変換層を形成した。電極部は、酸化グラフェン還元物(rGO: reduced graphene oxide)のアノードと、n型ドープされたSWCNT薄膜のカソードで構成した。
 電極まで炭素材料を使うオールカーボン太陽電池の変換効率は、近赤外光照射時に0.0041%と現状では極めて低い値にとどまっている。電極を標準的な太陽電池で使われるITOと銀電極にした場合の変換効率は、近赤外光照射時に0.13%、AM1.5ソーラーシミュレータの下で0.46%と報告されている。

(a)オールカーボン太陽電池のデバイス構造、(b)同デバイスのバンド構造のダイアグラム (Marc P. Ramuz et al., ACS Nano (2012) doi:10.1021/nn304410w)


 研究チームは現在、オールカーボン太陽電池の変換効率を向上させる方法について検討している。rGO電極については、より平滑で導電性の高いグラフェン薄膜に替えることで集電能力とデバイス再現性の向上が期待できる。また、rGO電極は光の透過性もあまり良くないため、より透明度の高い材料にすることでさらにデバイスの性能は上がるという。SWCNT電極と光電変換層との接触界面の平滑化によっても、デバイス性能の大幅な向上が見込まれる。近赤外光だけでなく可視光領域も含む広い範囲の波長を吸収できるナノ炭素材料の実験も行っている。こうした改善を重ねることによって、オールカーボン太陽電池の変換効率を1%超に上げることが可能であると研究チームは考えている。
 「炭素材料は非常に強靭であり、華氏1100度(約593℃)の気温下でも安定している」とスタンフォード大の化学工学教授 Zhenan Bao 氏は指摘する。このため、オールカーボン太陽電池には、高温条件や強い物理的負荷がかかる極端な環境下で使用できるという利点もあると考えられる。

(発表資料)http://bit.ly/Tg2iGr