バークレー研究所とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、グラフェンを利用して微弱な電界の強度および動きを画像化する技術を開発した。生体の心臓や脳神経ネットワークが発する微弱な電気信号を画像化する装置や、微量の体液をもとに病理診断を行うラボ・オン・チップなどへの応用が期待されている。2016年12月16日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。

液中での電界の時間変化を画像化(出所:バークレー研究所)

 研究チームは、グラフェンの吸光特性に合わせて光導波路を精密に設計した。赤外レーザーを発生させ、プリズムを通してをこの光導波路内を通過させる実験を行ったところ、電界のない状態では、すべてのレーザー光がグラフェン表面に吸収された。

 次に、溶液中で微弱な電気パルスをかけた状態に置くと、レーザー光の一部はグラフェンに吸収されずに漏れ出すようになった。このとき、グラフェンに吸光されなかったレーザー光を数千分の1秒の間隔で捉えるとことにより、グラフェン表面での電界の強度および位置を直接に画像化できることを確かめた。研究チームはこの画像化プラットフォームをCAGE(Critically coupled waveguide-Amplified Graphene Electric field imaging device)と名づけた。

CAGEの装置セットアップ。右下に見えるのがグラフェン試料(出所:バークレー研究所)

 CAGEでは数μVという弱い電圧に対して感度があるため、心筋細胞や神経細胞のネットワーク中に見られる細胞間の電界(数十μV~数mV)の測定にも利用できると考えられる。グラフェン表面での電界をピンポイントで捉え、電界強度の減衰を5ミリ秒の時間分解能で画像化することも可能であるという。

 従来の技術で生体細胞間の電気信号を捉えようとすると、細胞膜を遺伝子的・化学的に改変する必要があった。CAGEを用いると、細胞をいっさい撹乱せずに電界測定ができるようになるという利点がある。研究チームは現在、実際に生きている心筋細胞での電界測定実験にも取り組んでいる。
 
発表資料