東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授、リー・ソンウォン博士研究員らの研究グループは、世界で初めて、曲げても性質が変化しないフレキシブル圧力センサーの作製に成功した。圧力を感知する素材にナノファイバーを使って、センサーの厚みを2μmまで薄くした。ヘルスケア、医療、福祉など多方面への応用が期待される。2016年1月25日付けの Nature Nanotechnology に論文が掲載されている。

フレキシブル圧力センサー(出所:東京大学)

 ウェアラブルエレクトロニクスの装着感を低減するため、生体に密着する柔らかい圧力センサーの開発が重要となっているが、柔らかい素材でできた圧力センサーは、曲げたりよじれたりすると、変形に伴うひずみのためにセンサーの性質が大きく変化してしまい、正確に計測できなくなるという問題があった。

 研究グループは今回、ナノファイバーを用いることによって、曲げても正確に測れる圧力センサーを開発した。この圧力センサーは、半径80μmまで折り曲げても、圧力センサーとしての性質が変化せず、膨らませた風船のように柔らかい曲面上でも圧力の分布を正確に計測することができた。

 センサーを製造する高分子基材の厚みは1.4μmで、基材を含む全体の厚みは3.4μmとなっている。ナノファイバーは、エレクトロスピニング法によって形成され、直径は300~700nm。ナノファイバー同士が、繊維のように絡み合う構造を形成し、薄くて軽量な多孔性の素材を実現した。

 ナノファイバーは、フッ素系エラストマーの中に、カーボンナノチューブとグラフェンを添加して作製される。カーボンナノチューブとグラフェンの添加量を調整することによって、圧力をかけていないときにはナノファイバーが高抵抗で、わずかの圧力を加えると低抵抗になるようにした。センサーは薄く、たくさんの穴があいた構造であるため透明で、貼り付けても目立たない。重量は50mg/m2と軽量で、応答速度は圧力をかけた時に20ミリ秒、圧力をなくしたときには5ミリ秒となっている。

 多点計測できるフレキシブル圧力センサー(多点センサー)も作製した。このセンサーは、12×12の格子状に圧力センサーを並べたもので、全体で144点の圧力を計測できる。全体の厚みは8μmとなっている。

フレキシブル圧力センサー(出所:東京大学)

発表資料