デルフト工科大学と Graphenea の研究チームは、浮遊グラフェンを画像表示用ピクセルとして利用する研究を進めている。電子ブックやスマートウォッチ向けディスプレイへの応用が検討されている。2016年10月6日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。

浮遊グラフェンによる表示用ピクセルのイメージ(出所:デルフト工科大学)

 グラフェンピクセルは、シリコン基板の表面に幅約13μmの円形の凹みを作り、その上を二層グラフェン膜で覆った浮遊構造とする。グラフェンで覆われたシリコンの空洞内部には空気が入っており、グラフェン膜の内外での気圧の差によって膜が凹む方向が変わる。この凹みの方向の変化によって、シリコン空洞底面で反射した光とグラフェン表面で反射した光との間の干渉が変化するため、ピクセルの色が変わって見える。内側の気圧が外側よりも低いときは、グラフェン膜がシリコン底面に近づき、青い色に見える。逆に内側の気圧が外側よりも高いときは、グラフェン膜がシリコン底面から離れ、外側に向かって膨らみ、赤い色に見える。

 この動作は、干渉変調(IMOD:interferometric modulation)と呼ばれる表示方法の一種であり、シリコンMEMSディスプレイなどに取り入れられている技術と原理的に同じものである。シリコンMEMSをグラフェンに置き換えることによって、消費電力、ピクセル応答速度、欠陥率といった性能を大幅に向上できる可能性がある。自発光型デバイではないので、電子ペーパーやスマートウォッチなど昼間の屋外や明るい場所での使用を想定したデバイス向けの低電力ディスプレイとして期待できる。

 研究チームは当初、浮遊グラフェンをセンサーに応用する目的でデバイスの試作を行っていたという。作製したデバイスを顕微鏡で観察したところ、グラフェン膜の色が様々に変化することが分かった。色の変化はグラフェン膜が均質(ホモジニアス)ではないことを意味しており、センサーへの利用には適さないと結論しなければならなかった。しかしながら、色が変化する仕組みについて考察を続けたことで、当初のねらいとは異なる応用として干渉変調方式の表示用ピクセルに使えそうだということが分かり、新しい研究につながった。

 研究チームでは現在、グラフェン膜の凹凸の電気的な制御技術の開発や、表示用デバイスの試作などに取り組んでいる。来年2月末~3月初めにバルセロナで開催される Mobile World Conference 2017 にスクリーンのプロトタイプを出品することを目指すという。
 
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