産業技術総合研究所(産総研)機能化学研究部門スマート材料グループの神德啓邦研究員、松澤洋子主任研究員、木原秀元研究グループ長らは、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)などのナノ炭素材料の分散液に光を照射することで、ナノ炭素のみの層を簡便に薄膜化(膜厚20~30nm)できる技術を開発した。今後はグラフェンなど、他のナノ炭素材料への適用も進めていくという。

今回の技術でナノ炭素材料が分散液から直接、薄膜化するメカニズム(出所:産総研)

 ナノ炭素材料の薄膜化では、有機溶媒を用いたウェットプロセスが主に利用されている。真空環境を必要としないウェットプロセスはデバイスの大面積化などに適しているが、ウェットプロセス用の分散剤は、ナノ炭素材料への吸着性が高いため薄膜中に残留しやすく、導電性などを低下させる要因になっている。

 今回の研究では、有機溶剤中でもナノ炭素材料を分散でき、さらに光に応答してナノ炭素材料の分散状態を制御できる光応答性分散剤を開発した。この分散剤と単層CNTなどのナノ炭素材料を炭酸プロピレンなどの有機溶媒中で混合すると、均一な分散液が得られた。

 この分散液をPET樹脂の基板上(2.5cm角)に塗布し、基板の下方からフォトマスクを通して20秒程度紫外LED光(波長365nm)を照射した。光照射後、分散液を基板から除去し、基板を有機溶剤で洗浄した。すると、光を当てた部分にだけ、単層CNTが析出し膜厚20~30nmの薄膜が形成されていた。

 X線光電分光法(XPS)により、この単層CNT薄膜には分散剤がほとんど含まれないことが確認できた。光照射前には単層CNTは均一に分散しているが、フォトマスクを通して局所的に紫外光を照射すると、基板近くの単層CNTから優先的に分散剤が脱着し、同時に単層CNTが基板上に析出したと推定される。また、分散液の濃度や光照射時間を変えることで、数十nm~数十μmの範囲で膜厚を制御できた。

 今回開発した技術では、分散剤が残留せず、薄膜化とパターニングの工程が大幅に短縮されるので、ナノ炭素材料の特徴を生かした柔軟で軽量な二次電池やキャパシターなどの次世代電子デバイス開発が促進される。今後は、より均質な膜の作製や基材との密着性の向上、大面積化を目指す。また、他のナノ炭素材料(多層CNT、グラフェン、カーボンブラック)への適用も進める。企業と連携しながら、ナノ炭素材料を基盤とする二次電池用電極やキャパシタ、配線などの製品開発や、医療材料、機械工作用具といった新たな用途開発を目指すという。
 
発表資料