マサチューセッツ工科大学の研究チームは、グラフェンを使った極めて高強度かつ軽量の三次元構造材料を開発した。フレーク状のグラフェンを圧縮・融合して形成したスポンジ状の材料であり、密度は鋼鉄の5%しかないが、鋼鉄の10倍の強度を実現できるという。2017年1月6日付けの Science Advances に論文が掲載されている。

グラフェンを用いた高強度軽量材料(出所:MIT)

 今回開発された高強度軽量材料と似た構造の可能性については、これまで他の研究グループからも示唆されてきたが、実験的には上手くいかず、理論予想値より低い強度しか得られていなかった。MITのチームは今回、その理由を解明するため、構造内部の原子1個1個の挙動というレベルでの分析を行った。この分析により、実験で観察された結果と非常によく一致する数学的枠組みを作ることができた。

 グラフェンなどの二次元材料は、非常に高い機械強度と導電性を兼ね備えているが、あまりにも薄いため、自動車、建築物、装置などを作るための三次元の材料にはあまり適していないと研究チームは指摘する。そのため、二次元材料を三次元材料に変換する技術を開発する必要があったとする。

 研究チームは原子レベルの分析をもとに、熱と圧力を組み合わせて用いることによって、微小なフレーク状のグラフェンを圧縮する方法を開発した。このプロセスによって形成されるのは、ある種のサンゴや珪藻植物に似た構造である。体積に対する表面積の割合が巨大であり、非常に高い強度を持つという特徴がある。

 通常は低い強度しかない紙のような材料でも、筒状にまるめると飛躍的に強度が増すといった例からも分かるように、材料の強さはその幾何学的形態によって大きく変化する。今回の研究でも、出発材料としてはグラフェンが使われているが、得られた三次元材料の強度は、グラフェンそのものの物性よりも、設計上の特異な幾何学的形態によるところが大きいという。したがって、今回の設計手法を用いることで、グラフェン以外の様々な種類の材料から出発した場合にも、類似した性質をもつ強化材料を得ることが可能であると考えられる。

 ただし、今回の研究には、高強度軽量材料としての三次元グラフェンの限界を示しているという側面もある。これまでの研究では、三次元グラフェン構造を用いて空気より軽い超低密度材料を作ることによって、気球に使われるヘリウムガスを代替できる可能性などが指摘されていた。しかし、今回の研究で行われた原子レベルのモデリング計算では、そこまで極端な低密度にした場合には、十分な材料強度が保てず、空気の圧力によって構造が壊れてしまうとの予測が示された。
 
発表資料