カーネギー研究所 Lin Wang 氏らの研究チームが、非常に硬度の高い炭素材料を新たに発見したとのこと。ダイヤモンドへ刻み目をつけることが可能な硬さであるという。2012年8月17日付の Science に論文が掲載されている。

左は、フラーレン(マゼンタ)とm-キシレン溶媒(青)の混合物のシミュレーション画像。右は、これに40万気圧超の高圧を加えたとき形成される高硬度構造。フラーレンのカゴ状構造は壊れてアモルファス化しているが、溶媒があることで結晶の長距離秩序が維持されている (Image by Lin Wang, Carnegie Institution of Washington)

 研究チームは今回、フラーレン C-60 と有機キシレン溶媒を混合し、ダイヤモンドアンビルセルと呼ばれる装置を使って加圧。圧力の違いによって材料構造にどのような変化があるかを調べた。比較的低い圧力では、フラーレンのカゴ状構造が維持されたが、圧力を高めるとこの構造が壊れはじめ、アモルファスな炭素クラスタへと変化した。ただし、これらのアモルファス・クラスタはもともとの部位にとどまることで、格子構造を形成しており、結晶の長距離秩序が維持されているという。

 この新構造は、大気圧の32万倍程度という高圧条件下で形成され、圧力を下げた後もフラーレンのカゴ状構造に戻らなくなる。高圧を作り出すためのダイヤモンドアンビルに刻み目が入るほどの高い硬度を持っており、工業分野での様々な応用が期待できるという。

つづき

ダイヤモンドアンビル表面の光学顕微鏡写真。2か所の環状クラックが矢印で示されている。このクラックは、フラーレンとキシレン溶媒の混合物に33万気圧程度の圧力をかけたときに生じたもの (Image by Lin Wang, Carnegie Institution of Washington)

 新構造を形成するために使われた溶媒を熱処理によって取り除くと、周期的な格子構造は失われる。このことは、新構造への化学的転移を保持する上で、溶媒が重要な役割を果たしていることを示唆している。今回使われたものとよく似た溶媒は多数存在しており、それらを使って高圧をかけることにより、炭素の格子構造が少しずつ異なる様々な材料が作れる可能性があるという。

 炭素材料には、原子配列に繰り返しパターンが見られる結晶材料と、そうしたパターンが見られない(長距離秩序を持たない)アモルファス材料があるが、結晶とアモルファスのハイブリッド材料はこれまでのところ見つかっていない。Wang 氏は、「今回発見された新構造がそうしたハイブリッド材料の最初の例になるかもしれない」と話しており、特性の詳細な分析を進めたいとしている。

(発表資料)http://bit.ly/NyvIRS