中国・浙江大、ヘリウムより軽い超軽量カーボンエアロゲルを開発(2013/03/24)

 中国・浙江大学の研究チームが、カーボンナノチューブ(CNT)とグラフェンを用いたエアロゲルを開発し、超軽量材料の世界記録を更新した。密度は0.16mg/cm3しかなく、ヘリウムより軽い。2013年2月18日付けの Advanced Materials に論文が掲載されている。また、2月27日付けの Nature にも同研究のレビューが紹介されている。  今回開発されたエアロゲルは、市販のCNTと化学処理された大面積グラフェンの複合材料であり、超軽量性に加えて-190℃~900℃と広い温度範囲で極めて高い弾性を示す。構造的には、CNTが肋材となって、グラフェンの壁を支える役割を果たすという。  最大で自重の900倍の油を吸収することもできる。有機物を高速で吸収する能力もあり、1グラムのエアロゲルで毎秒68.8グラムの有機物を吸収できる。このため、海洋での石油流出事故に使える可能性がある。その他、エネルギー貯蔵材料、触媒キャリアなどの材料にもなるとみられる。  従来のエアロゲルの製法としては、ゾルゲル法とテンプレート法がある。ゾルゲル法はエアロゲルを簡単に大量合成できるのが利点だが、制御性に問題がある。テンプレート法を用いると規則的な構造形成が可能だが、テンプレートの精密な構造・寸法が要求されるため量産性に問題がある。研究チームでは今回、エアロゲルの新しい製法としてフリーズドライ法を開発した。この方法では、CNT・グラフェン溶液をフリーズドライ処理することで、任意の形状に整形できるカーボンスポンジを得られる。テンプレートを必要としないため、エアロゲルの大きさは容器のサイズだけで決まる。容器を大きくすれば、数千cm3以上の大きなエアロゲルを作製することもできるという。 (発表資料)http://bit.ly/16QZSWZ

LEAP、微細幅低抵抗グラフェン横配線と高アスペクト比CNTビアの開発状況を報告(2012/12/22)

 超低電圧デバイス技術研究組合(LEAP)が、2012年12月19日、つくば国際会議場で「低炭素化社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト成果報告会」を開催した。その中で、同研究組合 三次元ナノカーボン配線研究グループの酒井忠司氏から、グラフェン横配線と高アスペクト比カーボンナノチューブ(CNT)ビアについて、開発状況の報告があった。  グラフェン横配線については、10nm以降の半導体デバイスで予想される細線効果による銅配線の金属抵抗の急増への対応を念頭に開発を進めている。中間目標として50Ω/□@100nm幅、最終目標として3Ω/□@20nmでの微細幅低抵抗グラフェン横配線の実現をめざすとしている。  今年度の成果としては、芝浦工業大学と連携し、臭素のインターカレーションドーピングによって剥離グラフェンを1桁程度低抵抗化し、金属並みの体積抵抗を確認した。銅配線の抵抗1.7μΩcmに近い4~8μΩcmという値が報告されている。  多層グラフェンの低温成長については、触媒段差を起点とする600℃のプロセスでの多層グラフェンの面方向成長が確認された。触媒段差を起点とするグラフェン成長を利用した配線形成プロセスとしては、段差から成長したグラフェンを反応性イオンエッチング(RIE)によってパターニングして配線化するグラフェンRIE型プロセスと、CMP処理でダマシン加工した触媒部位にグラフェンを成長させる触媒ダマシン型プロセスが検討されている。配線幅を微細化できるグラフェンRIE型が本命だが、開発は触媒ダマシン型のほうが先行しており、300mmウェハー上でのNi触媒のダマシン加工が実現されたことによりスループロセスでのグラフェン成長が可能になっている。  触媒については、触媒金属(Ni、Co)にRu、Irを添加した耐熱合金触媒によって成長時の触媒凝集が抑制されることが確認された。この耐熱触媒を段差構造に適用することで、グラフェンRIE型において段差からの成長起点制御が行える可能性がある。配線形成には、グラフェンの成長領域および粒径の拡大が課題であるという。また、触媒ダマシン型のプロセスでも、プラズマ前処理を行わない低温CVDでNi触媒の触媒凝集を抑制しながらグラフェン成長が可能なことが確認されている。  高アスペクト比CNTビアについては、CVDによるビアへのNi触媒形成プロセスを開発。ビア底触媒のプラズマ微粒化により、アスペクト比16のビア(高さ1.6μm、ビア径0.1μm)へのCNT埋め込みを実証した。現在、300mmナノカーボン配線専用TEGを用いて、ナノカーボン成膜・CMP加工・上層電極プロセスの整備を進めている。 (取材/SJN)

ライス大、グラフェンとCNTのハイブリッド体を作製。スーパーキャパシタ部材などに応用期待(2012/12/05)

 ライス大学の研究チームが、グラフェンシート上に多数のカーボンナノチューブ(CNT)を急速成長させることに成功した。CNTは120μmの長さまで成長するという。高い導電性と大きな表面積を得られるため次世代キャパシタなどへの応用が期待される。2012年11月27日付の Nature Communications に論文が掲載されている。  グラフェンとCNTが継ぎ目なくつながった三次元の構造体を作製した。グラフェンとCNTの結合部分では炭素原子の共有結合が形成されており、単にグラフェン上にCNTが載っているのではなく、CNTがグラフェンの一部を構成するハイブリッド体となっている。  「金属電極へのCNTの接合を試みた研究は数多くあるが、わずかな電子的障壁が界面に生じるため、うまくいった例はない」と研究リーダーの化学者 James Tour 氏は指摘する。一方、今回の方法では、金属(銅)上にグラフェンを成膜し、その次にグラフェン上でCNTを成長させるため、CNTと金属電極の電気的接点がオーミックコンタクトになるという。これはグラフェン/CNTハイブリッド体が切れ目のない1つの材料であり、電子の流れに変化が起きないことを意味している。また、グラフェン/CNTハイブリッド体の表面積は、1gあたり2000m2と非常に大きくなるという。大容量の急速充放電が可能なスーパーキャパシタなど、電子部品用途への応用が期待できる。  グラフェンからCNTへの遷移部分は、炭素の七員環構造となる。こうした材料構造は理論的に予想されていたが、今回サブナノ分解能での電子顕微鏡像によって実際に確認された。  グラフェン/CNTハイブリッド体の合成プロセスでは、まず1000℃のCVDによって銅箔上にグラフェンを成膜する。次に、グラフェン成膜された銅箔上へ、電子線蒸着によって鉄とアルミナを堆積させる。750℃のCVDによって、グラフェン表面にCNTを直接成長させる。このとき鉄触媒層とアルミナ保護層がCNTの成長によって下から持ち上げられる。CNTは単層、二層、三層で成長していることが電子顕微鏡像で観察されている。 (発表資料)http://bit.ly/11DrAD7

スタンフォード大、炭素だけでできたオールカーボン太陽電池を開発(2012/11/05)

 スタンフォード大学の研究チームが、光電変換層、電極部などすべての要素を炭素材料だけで構成したオールカーボン太陽電池を作製したとのこと。変換効率はまだ低いが、地球上に豊富に存在する安価な資源である炭素だけで作られた太陽電池として注目される。超高温など苛酷な環境下で使える可能性もある。2012年10月31日付の ACS Nano オンライン版に論文が掲載されている。 (つづき)  光電変換層に炭素材料を使った太陽電池は、これまでにもいくつか報告されてきた。最近では、2012年6月にMITが単層カーボンナノチューブ(SWCNT)とフラーレン(C60)でpn接合を形成したカーボン太陽電池を作製。このときの変換効率は0.1%だった。電極部はITOと銀電極を使用していた(既報)。  今回スタンフォード大のチームが報告した太陽電池は、光電変換層に加えて電極部にも炭素材料を使用したオールカーボン製であることが特徴。光吸収層およびドナー層には、有機半導体高分子(P3DDT)によって整列させた半導体型SWCNTを使用。アクセプタ層にはC60を使用し、SWCNT/C60の二層による光電変換層を形成した。電極部は、酸化グラフェン還元物(rGO: reduced graphene oxide)のアノードと、n型ドープされたSWCNT薄膜のカソードで構成した。  電極まで炭素材料を使うオールカーボン太陽電池の変換効率は、近赤外光照射時に0.0041%と現状では極めて低い値にとどまっている。電極を標準的な太陽電池で使われるITOと銀電極にした場合の変換効率は、近赤外光照射時に0.13%、AM1.5ソーラーシミュレータの下で0.46%と報告されている。  研究チームは現在、オールカーボン太陽電池の変換効率を向上させる方法について検討している。rGO電極については、より平滑で導電性の高いグラフェン薄膜に替えることで集電能力とデバイス再現性の向上が期待できる。また、rGO電極は光の透過性もあまり良くないため、より透明度の高い材料にすることでさらにデバイスの性能は上がるという。SWCNT電極と光電変換層との接触界面の平滑化によっても、デバイス性能の大幅な向上が見込まれる。近赤外光だけでなく可視光領域も含む広い範囲の波長を吸収できるナノ炭素材料の実験も行っている。こうした改善を重ねることによって、オールカーボン太陽電池の変換効率を1%超に上げることが可能であると研究チームは考えている。  「炭素材料は非常に強靭であり、華氏1100度(約593℃)の気温下でも安定している」とスタンフォード大の化学工学教授 Zhenan Bao 氏は指摘する。このため、オールカーボン太陽電池には、高温条件や強い物理的負荷がかかる極端な環境下で使用できるという利点もあると考えられる。 (発表資料)http://bit.ly/Tg2iGr

ケンブリッジ大、CNTを使って広視野角・高解像度のホログラム投影(2012/09/25)

 ケンブリッジ大学の研究チームが、カーボンナノチューブ(CNT)を散乱素子に用いたホログラム映像表示に成功したとのこと。従来にない広い視野角で高解像度のホログラムを投影できる。2012年8月31日付の Advanced Materials に論文が掲載されている。  研究は、同大 Centre of Molecular Materials for Photonics and Electronics (CMMPE)の Haider Butt 氏らによるもの。CNTの散乱素子に様々な色のレーザー光を当てることで、光の回折によるホログラム像を生成した。CNTの配置パターンを計算し、”CAMBRIDGE” の文字を三次元的に表示させた。 (つづき)  今回のCNT散乱素子は、ホログラム用の画素としてはこれまでで最小のものとなる。画素が小さければ小さいほど、映像の解像度は上がり、ホログラムの視野角は広がる。使用された多層CNTはヒトの髪の毛の1/700程度の細さ。シリコン層の上に垂直に成長させた。  この技術は、高解像度の映像表示ができるだけでなく、材料や入射光の変化に対して非常に敏感であるという特徴がある。「生体材料の距離や動き、傾き、温度、密度などを測定できる高感度ホログラフィックセンサの開発も可能」と Butt 氏は話す。研究チームでは、CNTよりも安価な材料で同様の効果を得る方法の研究も行っている。酸化亜鉛ナノワイヤについて試す予定という。  現時点では、CNTホログラムが表示できるのは静止画像だけだが、ホログラムの動画化にも取り組んでいる。液晶ディスプレイなどの技術をホログラムと組み合わせることで、画像の切り替えを可能にし、超鮮明なホログラフィック動画の実現をめざす。 (発表資料)http://bit.ly/UlAvI7

名古屋大、カーボンナノケージの合成に成功(2012/09/05)

 名古屋大学 伊丹健一郎教授らのグループは、120個の炭素原子と78個の水素原子からなる「かご状」の炭素ナノ分子化合物であるカーボンナノケージの合成に成功した。世界で初めての成果であるという。2012年8月29日付の Chemical Science オンライン版に論文が掲載されている。  伊丹氏らは、ベンゼンをリング状につないだ分子であるカーボンナノリングの合成を2009年に報告している。カーボンナノリングは炭素原子と水素原子だけで構成される分子。本来平面であるベンゼンがリング状にひずんでいることから合成困難だったが、独自の手法により合成段階におけるひずみを解消したことで、様々な大きさや形状のカーボンナノリングの合成が可能になった。カーボンナノリングは直線型カーボンナノチューブの最短部分骨格であり、太さや側面構造を制御した純正カーボンナノチューブの完全化学合成に向けた理想的なビルディングブロックであるとされる。  今回合成したカーボンナノケージは、カーボンナノリングと同様に本来平面であるベンゼンが弧を描くように曲がっており、ひずみが生じている。カーボンナノリングの合成手法を応用することでこのひずみを解消し、カーボンナノケージの合成を達成した。 (つづき)  具体的には、L字型のユニットと三叉のユニットを鈴木・宮浦カップリングなどの遷移金属触媒反応によって組み合わせ、ひずみのない箱状の前駆体化合物をまず合成した。最後にL字のカドに使用しているシクロヘキサン部位を芳香族化反応によってベンゼン環に変換することで、一様に湾曲したアーチを3本もつカーボンナノケージを合成した。  カーボンナノケージは、白色固体でほとんどの有機溶媒によく溶け、また300℃以上でも分解しないという非常に取り扱い易い性質をもつ。ケージの中心部に直径1.8nmの球状のナノ空間を有していることから、ゲスト分子の取り込みも可能となるいう。  カーボンナノケージの光物性は産業技術総合研究所 ユビキタスエネルギー研究部門 鎌田賢司主任研究員との共同研究によって詳細に明らかにされており、1光子吸収、2光子吸収ともに効率的に起きることや溶液中において強い青色の蛍光を発すること(蛍光量子収率87%)が確認されている。  こうした光物性および構造的特徴から、カーボンナノケージは有機EL材料、有機トランジスタ材料、光記録材料、高密度光ストレージ、生体分子の蛍光イメージング、ゲスト分子の光センサといった広範囲に渡る分野への応用可能性があるという。  また、カーボンナノケージは分岐型カーボンナノチューブの接合ユニットに相当している。分岐型カーボンナノチューブはトランジスタや論理ゲートとしてエレクトロニクス分野への応用が期待されており、カーボンナノケージはその精密ボトムアップ合成を可能にする理想的な部品であると考えられる。 (PDF形式の発表資料)http://bit.ly/MVtrPl

東北大、「ジグザグ型」有限長CNTの化学合成に成功。すべての型の合成法が出揃う(2012/07/25)

 東北大学の磯部寛之教授の研究グループが、「ジグザグ型」の有限長カーボンナノチューブ(CNT)のボトムアップ化学合成に成功したと発表した。世界初の成果であるとする。これまで「らせん型」と「アームチェア型」の有限長CNTの化学合成については研究例があったが、「ジグザグ型」だけが実現していなかった。今回「ジグザグ型」が合成されたことで、有限長CNTの3つの基本型の化学合成法が揃ったことになる。2012年7月16日付の米国化学会誌(Journal of The American Chemical Society)に論文が掲載されている。  合成された有限長CNTは、ベンゼン環が環状につながったもので、CNTとしては最短の構造となる。磯部氏らのグループは2011年10月、クリセンと呼ばれる芳香族分子4つをカップリング反応で環状につなげる化学合成によって「らせん型」「アームチェア型」を混合物として合成する方法を報告していた。今回これにつづき、クリセン分子をつなげる位置を変えることで「ジグザグ型」単一種の選択的な化学合成を実現した。  「ジグザグ型」の有限長CNTは反応性が高いために、合成は困難であるとの理論予測も報告されていた。今回の成果はこの予測を覆すものとなる。 (つづき)  さらに、X線を用いた分子構造解析により、これまでに想定されていなかったナノチューブの織り込み構造も発見された。今回の有限長CNTの開口端には脂肪鎖と呼ばれる細い分子鎖が導入されているが、この分子鎖が別のナノチューブ分子の内部空間に取り込まれることでナノチューブ分子が互いに織り込まれ、紐状の組織化構造をつくりあげるという。  現状のCNT合成プロセスでは、構造が異なる様々な型のCNTが同時に形成されるという性質がある。CNTの構造は「アームチェア型」「らせん型」「ジグザグ型」の3種類に大別され、それぞれの型の中にさらに細かな分類がある。またCNTの太さ(口径)や長さも様々なものが存在している。これらの構造・形状の違いがCNTの材料特性を大きく左右するため、精密な特性解明や機能開発のためには、明確な構造をもった単一種のCNTが要求される。最近になって、有限長CNTを一種類の物質としてボトムアップ化学合成・分離する試みが、世界中で始まっている。  CNTは、半導体的な電気特性をもつものと金属的な電気特性をもつものが存在しており、この違いもCNTの結晶の巻き方に影響されて決まる。半導体型CNTと金属型CNTがランダムに混在するバルクCNTから半導体型、金属型を選択分離する技術はすでにあるが、もともとの成長段階から半導体型と金属型を作り分ける方法はいまだ確立されていない。これが、CNTのデバイス応用を制限するハードルとなっている。シリコンのトランジスタや金属配線などを代替する電子デバイス材料としてCNTを利用するためには、バルクからの分離ではなく、デバイスの製造プロセスに組み込める形で半導体型/金属型の選択的成長を行う必要があると考えられるからである。  今回の研究成果によって構造の異なる有限長CNTの選択的合成が可能になったため、原理的には、有限長CNTを伸長させる手法を開発できれば狙った型のCNTのみを製造できることになる。磯部氏は、この点について将来の検討課題になるとしている。 (発表資料)http://bit.ly/NzPNDS

「長さ1メートルのCNT作れる」ライス大らが報告。位相欠陥の修復機構をシミュレーションで解明(2012/07/05)

 米国ライス大学と中国の香港理工大学、清華大学の共同チームが、カーボンナノチューブ(CNT)の自己修復能力に関する研究を行っている。それによると、温度条件や触媒を適切に設定することで、CNTは最大1mの長さまで無欠陥で結晶成長することができるという計算結果が得られたという。2012年6月15日発行のPhysical Review Lettersに論文が掲載されている。 (つづき)  研究チームは今回、CNTの位相欠陥を修復する作用のある触媒について調査。その結果、もっとも効率よく修復が行える触媒は「鉄」であることをつきとめたとする。CNTの位相欠陥とは、通常6個の炭素原子が結合して形成される結晶の環の一部が炭素原子5個または7個などになっている欠陥であり、CNT形成時には不可避的に発生するもの。これがあると、CNTの優れた電子的・物理的特性に影響が出るが、温度条件などの要素の組み合わせを適切に行うことによって炭素原子の誤った配置は動力学的に修正され、エネルギー的に安定した六角形の構造に戻るという。研究チームは、CNTの変形に必要なエネルギーについて、密度汎関数理論(DFT: density functional theory)を用いて分析している。  最適化された条件化で五角形や七角形の位相欠陥が発生する確率は、わずか100億分の1であるという。鶏舎用の金網のような形状のCNTにおいて、それぞれの炭素原子がどんな位置を取るのかは、各原子に関連付けられたエネルギーによって決まる、とライス大 材料科学・機械工学・化学教授 Boris Yakobson氏は説明する。ただし、成長中のCNTと触媒の界面で実際に何が起こっているのかについては、研究者の間で長い議論が続いてきた。  Yakobson氏によれば、この議論には2つの仮説が存在しているという。よく知られた仮説の1つは、頻繁に生じる欠陥がCNTの内部に入り込み、熱の作用で修正されるとするもの。これについては、何種類かの修正プロセスがあるとされる。その一方で、欠陥というものは基本的にまったく生じないのだとする仮説もある。こちらの仮説は確かに奇妙な感じがする話ではある。  Yakobson氏は、どちらの仮説についても、これまでは定量的分析を伴わない単なる言葉の上での議論だったと指摘。今回の研究の意義は、この問題について最先端の計算による定量的な評価を行っているところにあるとする。特に、1番目の仮説に出てきた熱による修正(アニーリング)について、位置に依存してどの程度の速度で起こるかを分析している点が重要であるという。  炉の内部では、触媒部位に炭素原子が1個ずつ加えられ、CNTが成長していく。これは高い塔のてっぺんが最初にできて、後から土台の部分にレンガが付け加わって塔がニョキニョキのびていくような感じだが、数分間に数百万個というすごい速さでレンガが付け加わっていくため、間違いが起こり、構造に変化が生じることになる。  理論上、炭素原子5個の環が単独で生じる場合には、その後に続く原子の配列にも歪みが出て、チューブは円錐形に変形すると考えられる。炭素原子7個の環が単独で生じる場合には、チューブはホルン型の末広がりな形に変形する。  しかし、今回行われた計算は、こうした単独での欠陥がCNTの壁に生じることはないという結果も示している。計算では、炭素原子5個の欠陥と7個の欠陥が常にペアになって生じるとされる。これが素早く欠陥の修復が行われる理由である。7個の環から5個の環へと原子1個が移動することで、両方の環が通常の炭素原子6個の環に変わると考えられる。  研究チームは、こうした原子の移動による欠陥修復が最も起こりやすくなるのが絶対温度930K付近であることも明らかにした。また、CNTの成長で通常使われる3種類の触媒、ニッケル・コバルト・鉄の中で、この温度条件での修復に適しているのは鉄であるとしている。  成長中のCNTと触媒の界面において原子5個と7個のペアが形成されると、非常に素早く修復が起こるとされる。より新しい原子がCNTの壁に欠陥を押し込むにつれて、修復は起こりにくくなり、触媒から4原子以上離れると欠陥は固定される。  CNTを成長させる条件を厳しく制御することによって、素早い自己修復が促されると考えられる。原子配列のエラーは、CNTの壁の一部になる前に瞬間的に修復される。研究チームは、CNTの成長速度が遅くなるにつれて、より長い無欠陥CNTが成長することもシミュレーションで確認。700Kの温度下で毎秒1μm程度成長するCNTが、長さ1mに達する可能性があることも分ったという。 (発表資料)http://bit.ly/MOjH4t

MIT、近赤外光で発電できるカーボン太陽電池を開発(2012/06/25)

 マサチューセッツ工科大学(MIT)が、炭素材料だけで光電変換層を構成するカーボン太陽電池を開発したとのこと。太陽光に含まれる近赤外光はエネルギーが低く、従来のシリコン太陽電池では電気に変換することができなかった。地上に到達する太陽光の波長のうち40%程度は近赤外の領域にあるため、これを発電に使えるようになれば、太陽光エネルギーの有効利用拡大につながると考えられる。Advanced Materialsに論文が掲載されている。  今回のカーボン太陽電池は、カーボンナノチューブ(CNT)とフラーレンC60だけで構成されている。CNTを使った太陽電池はこれまでにも報告があるが、CNTの支持体として、またCNTの光電変換によって生成された電子を電気エネルギーとして取り出すために、高分子層が使われていた。このため製造プロセスが複雑になり、高分子層が空気に曝されて劣化するのを防ぐための特殊なコーティングも必要だった。これに対して、炭素材料だけでできている今回のカーボン太陽電池は空気中でも安定であるという。 (つづき)  カーボン太陽電池が可能になった理由の1つとして、ここ数年でCNTの高純度化技術が進展したことが上げられる。研究チームのメンバー Rishabh Jain氏へのメール取材によると、今回のカーボン太陽電池で使われているCNTはすべて半導体型の単層CNTであり、さらにCNTの巻き方についても、電子的特性が同じになる2つの対称的な巻き方(右巻きと左巻き)のうち、どちらか一方に揃えた状態で巻かれているという。  異なる巻き方が入り混じったヘテロジニアスなCNTや、単層CNTと多層CNTが混在した材料では変換効率が上がらないか、太陽電池としてまったく機能しないことが分っている。CNTの組成を均質(ホモジニアス)にすることで、光電変換機能を持つカーボン太陽電池が可能になったと考えられる。  カーボン太陽電池と従来のシリコン太陽電池を積層したタンデム構造にすることで、太陽光に含まれるほとんどすべての波長の光を電気エネルギーに変えることができるようになる。CNTの光吸収性が極めて高いため、太陽電池の作製に使われる高純度CNTは比較的少量で済み、完成品を非常に軽量化することができる。  カーボン太陽電池の変換効率は現状では0.1%と低く、コンセプトを実証した段階にとどまっているが、変換効率を上げていくための開発方針はすでに分っているとのこと。研究チームでは現在、カーボン層の形状や膜厚をより精密に制御する方法などを研究しているという。他の研究グループにも協力を呼びかけ、変換効率の向上をめざすとしている。  ただし、チームリーダーのMIT 化学教授 Michael Strano氏は、既存の太陽電池で使われていない近赤外領域の波長を利用できることから、変換効率の低い現状のカーボン太陽電池であっても低コストであるかぎり利用価値はあると指摘している。 (発表資料)http://bit.ly/KPn00m

スタンフォード大ら、多層CNTの触媒活性を高める方法を発見。白金触媒代替材料に期待(2012/06/15)

 スタンフォード大学らの研究チームが、多層カーボンナノチューブ(CNT)の触媒活性について新たな知見を報告。それによると、多層CNTの外側の層が一部ちぎれて微小なグラフェン状の構造を形成することによって、触媒活性が高くなるとのこと。燃料電池やリチウム空気電池で使われている白金触媒の代替材料になる可能性があるという。2012年5月27日付の「ネイチャー・ナノテクノロジー」オンライン版に論文が掲載されている。  今回の研究で使用されたのは、2~3層のCNTが同心の入れ子構造となった多層CNT。外側のCNTを細かくちぎり、内側は無傷のままにしておくことで、CNTの導電性を損なうことなく触媒活性を高めることができるとする。「通常のCNTにはほとんど欠陥がないが、触媒部位の形成を促して触媒活性を高める上では欠陥の存在が重要」と論文の筆頭執筆者 Yanguang Li氏は指摘している。 (つづき)  Li氏らは、化学溶液中で処理した多層CNTを顕微鏡観察。この処理によって外側CNTの一部がやぶけてナノサイズのグラフェンとなり、ほぼ無傷なままの内側のCNTに張りついた状態となっていることを確認したとする。  この状態の多層CNTに微量の鉄と窒素の不純物を添加すると、触媒反応の活性が非常に高くなるという。一方、内側のCNTが無欠陥のままであるため、電子の移動が妨げられることもないとしている。単層CNTを使った場合には、CNTの損傷部によって導電性が低下するため、この利点は得られないと考えられる。  燃料電池や金属空気電池(リチウム空気電池や亜鉛空気電池など)では、水素と酸素を水に変換する化学反応の速度を上げるために白金触媒が使われているが、今回の多層CNTは白金に非常に近い触媒活性を持っているという。白金は、過去5年間の取引価格が1オンス800~2200ドル超というように高価な材料であるため、CNTでこれを代替できるようになれば、電池の低コスト化につながることが期待できる。  研究チームは最近、実験で得たCNT触媒のサンプルをテストするために、燃料電池の専門家の元へ送ったとのこと。「研究の目標は、エネルギー密度が非常に高く、長時間作動する燃料電池をつくることにある」とLi氏は話す。金属空気電池に使われている白金やパラジウムその他の貴金属触媒も、CNT触媒で代替できる可能性がある。  今回の研究は、酸素反応が起こる触媒活性部位の化学的構造に関する長年の議論に答えを出すことになるかもしれないという。Li氏によれば、一方のグループは「活性部位で鉄の不純物が窒素と結合している」と考え、他方のグループは「活性部位を構成するのは窒素だけであり、鉄は活性部位の働きを促進するだけ」と考えているとのこと。研究チームはこの議論に答えを出すために、オークリッジ国立研究所の協力を得て、CNTの原子スケールでの画像化と分光分析を実施。その結果は、鉄原子と窒素原子が非常に近接して存在していることを証拠立てるものだったという。  スタンフォード大の化学教授 Hongjie Dai氏は「この種の触媒で個々の原子のイメージングを行ったのは、今回が初めて」と話す。「すべての画像は鉄原子と窒素原子が近接していることを示しており、2つの元素が結合していることを示唆している。このような画像化は、グラフェンが原子1個分の厚さしかないために可能になっている」  Dai氏は、活性部位に豊富に存在している鉄の不純物が、実験者によって意図的に加えられたものではなく、CNT作製時に使われたメタルシードに由来するものであると指摘。CNTにおける金属不純物は無視できないものであり、偶然に混入した鉄が貴重な研究成果につながったとしている。 (発表資料)http://bit.ly/LLxv2q

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